サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘パーム油’カテゴリーの記事一覧

地上に残された貴重な森「ルーセル・エコシステム」が破壊の危機に(2019/5/15)

日本代表 川上 豊幸
(本記事は地球・人間環境フォーラム『グローバルネット』(2019年5月号)に寄稿したものです)

「ルーセル・エコシステム」は、インドネシア・スマトラ島北部に位置し、まとまった形で残されたアジア最大の熱帯林地帯の一つです。長野と新潟の2県の広さに匹敵する約260万haの広大な地域に、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが大自然の中で共存する地球上で最後の場所です。この豊かな生物多様性ホットスポットは、良質な水の安定供給、漁業に最適な環境、洪水や干ばつの防止、農業に適した気候に加え、小規模分散型の水力発電の可能性、観光にもってこいの自然美、生物多様性の提供など、地域社会の経済や地球の気候や環境にとって重要な利益をもたらしています。山岳地帯は世界遺産に指定されていますが、森林地帯はパーム油や紙の原料を得るためのプランテーション開発の危機にさらされており、保全を求める声が世界から集まっています。

生物多様性の重要性とルーセルの二つの森

科学者や自然保護活動家たちは多くの理由から、ルーセル・エコシステムを「保護価値の高い(HCV)」地域に分類しています。この地域には山地林と低地林の2種類の森林があります。山地林には絶滅の危機に瀕する希少種のスマトラサイが生息し、野生では100個体以下しか残っていません。またスマトラサイが餌とする多様な植物が生育し、種の生存にも不可欠です。シカ、クマ、トラ、ウンピョウなどの大型動物も生息しています。低地林も重要で、ルーセル・エコシステムで最も高い生物多様性が存在しています。世界で最大かつ最も背が高い花の2種、ラフレシアとスマトラオオコンニャクが見られ、また地域で最も樹高のある木々が育ち、スマトラオランウータン、トラ、ゾウ、サイなどの絶滅危惧種やマレーグマに貴重な生息地を提供しています。さらに、ウンピョウ、サイチョウ、また、多くの種類の霊長類や、サル、シカ、昆虫、両生類、爬虫類、鳥類の個体群を支えています。

絶滅が危惧されているスマトラオランウータン (©Paul Hilton/RAN)

地球規模の気候変動に効果のある「炭素貯蔵吸収スポンジ」

ルーセル・エコシステムには、何十億tもの高濃度炭素を蓄えた三つの主な泥炭地、トリパ、シンキル、クルエットがあります。その泥炭の深さは12m以上に達し、面積は香川県ほどの約18.4万ha以上に達します。これらの泥炭地では木が自然に枯れて、湿った地面に倒れ、通年浸水しているため、木々の落ち葉や枝、倒れた幹はゆっくりと炭素豊かな泥炭へと変化します。こうして何世紀にもわたって、水の下の深い泥炭堆積物の中に炭素が貯蔵され、隔離された炭素は放出されず、地球温暖化の緩和に役立っています。一方で、泥炭地が農地転換され、排水されると、大規模な酸化で炭素が一気に大気へ放出され、温暖化を進める二酸化炭素(CO2)が大気に蓄積されてしまうのです。

アブラヤシ農園の開発による森林破壊とパーム油

過去30年間、大規模アブラヤシ農園企業と紙パルプ企業が、農園や植林地を拡大するため、数百万haもの泥炭地で森林を伐採し排水してきました。乾燥した泥炭は可燃性が高く、度重なる火災で膨大な量のCO2が放出されます。インドネシアの泥炭火災のCO2の排出量1年分は、西欧全体の化石燃料排出量と同等と推定され、同国は中国と米国に次いで世界第三位のCO2排出国です。

現在、この泥炭地を含む低地林とそこに依存する動植物は、アブラヤシ農園拡大が原因で最大のリスクに直面しています。専門家は、ルーセル・エコシステムの低地林や泥炭地が破壊されると、スマトラオランウータンが野生下で絶滅する最初の類人猿となる可能性があると警告しています。そんな負の遺産は残すべきではありません。

この人為的災害は世界的なパーム油需要の急増によるものです。パーム油は世界で最も広く使用されている植物油で、主にインドネシアやマレーシアで栽培され、世界中に輸出されています。今やアブラヤシ農園はルーセル・エコシステムを含むインドネシアの熱帯林の中心部へと深く侵入し、同時に土地収奪、地域住民との紛争、人権侵害、汚職、労働搾取も引き起こしています。

アブラヤシ農園開発のために伐採されるルーセル・エコシステムの低地林(©Paul Hilton/RAN)

ルーセル・エコシステムを救うために私たちにできること

このような問題を解決するには、消費者や企業による「責任あるパーム油」の需要拡大と、問題のある「紛争パーム油」の排除が必要です。パーム油生産者、加工業者、貿易業者、資金提供者、消費財メーカーに原材料から問題を抱えているパーム油を除外するよう大きな声を届け、購買力を使って働き掛ければ、企業はビジネスのやり方を変えざるを得なくなります。

また、俳優のレオナルド・ディカプリオら有名人も取り組む世界的キャンペーン「ルーセルを愛そう」に参加し、この問題を日本でも広く知らせ、企業に問題への対処を促すこともできます。

米国の環境NGOのRANは、1985年の設立以来、環境・森林保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動を行ってきましたが、2013年からはスナック食品企業20社に対して責任あるパーム油調達を求めています。多くの企業が改善へと動く中、日清食品と東洋水産は最も対応が遅れています。主な即席麺製品には大量のパーム油が使用されていますが、2社はパーム油調達方針の策定はしたものの不十分で、森林破壊に直接関係したり、オランウータンの死亡や住民立ち退きへの関与リスクが高いパーム油を排除する対応が不足しています。とくに日清食品は持続可能な大会を目指す東京五輪のスポンサーであり、RANでは同社に改善を求める国際署名を行っています。

また金融機関に紛争パーム油やルーセル・エコシステムの破壊に資金を提供しないよう求めることもできます。過去5年、アジアの一部の銀行は森林破壊のリスクがある事業の最大の資金提供者であり、日本の3メガバンクが融資するパーム油企業でも、労働権侵害、土地紛争、違法なアブラヤシ農園、森林減少などのリスクに直面しています。

一人ひとりが企業や政府が自然保護への誓約を守り、企業や銀行が自社の行動に責任を持つよう働き掛けることで、問題解決に向けた動きがうねりを作って変化につながると考えています。

プレスリリース: 3メガ融資先 インドネシア食品大手「インドフード」のパーム油部門 労働権侵害でRSPO認証停止 (2019/3/6)

〜NGO、大手グローバル銀行と投資家が違法行為・労働酷使に加担していると批判〜

パーム油認証制度の「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)が、パーム油生産企業サリム・イボマス・プラタマ(SIMP)とその子会社ロンドン・スマトラ(ロンサム)の会員資格停止を3月1日に発表したことを受けて(注1)、本日6日、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、「メガバンクが制定した方針を実行するための試金石となる」とコメントを発表しました。SIMPはRSPOで4番目に大きい会員企業で、インドネシア最大の食品会社及び世界最大の即席麺企業としても知られるインドフードのパーム油部門です。インドフードは、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

今回の資格停止決定に先立ち、RSPOは昨年11月、ロンサムが所有するアブラヤシ農園で確認された20件以上のRSPOの基準違反と10件のインドネシア労働法違反に対処するための是正措置計画の提出を求めていました(注2)。しかし、ロンサム、SIMPそしてインドフードはその勧告に従うことなく、1月にRSPO認証制度から脱退することを一方的に告知(注3)していました。

RAN責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは 「RSPOが基準を実行したことを歓迎します。インドフードとその子会社は、RSPO基準、国際的規準、インドネシアの法律を長期にわたって軽視してきました。今こそ、インドフードと取引を続けている全ての銀行や投資家、企業は、違法行為や労働搾取を助長しないよう、自社方針に従ってインドフードとの取引をただちに停止するべきです」と訴えました。

インドフードの事業は、大手グローバル銀行や投資家からの数十億ドルの資金調達によって支えられています。一方で、多くの銀行と投資家は違法行為への資金提供に関する明確な方針を持っています。インドフードへ多額の融資をしているSMBC、みずほ、MUFGも例外ではありません。他の2行と比べ、SMBCの方針は『人権侵害が行われている可能性の高い融資を禁止』し、『RSPO、或いはそれに準ずる認証機関の認証を受けている(略)パーム油農園開発を支援します』と明確に定めています。今回のインドフードのRSPO認証停止を受けて、融資を続けることは方針違反になりかねません。インドフードへの最大の投資家には、ブラックロックや日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も含まれます。

ハイネケンは「日本のメガバンクは、インドフードとその子会社にとって主要な金融機関です。 インドフードは2018年9月30日の時点で、3メガバンクから730億円以上の融資を受けています(注4)。3行は2018年5月と6月に社会と環境に配慮した投融資方針を初めて発表し、全ての銀行が違法行為への融資を禁止しています。3メガバンクのインドフードに対する今後の対応は、制定した方針を実行するための試金石となるでしょう」と強調しました(注5)。

【これまでの経緯】

●インドフード子会社のアブラヤシ農園での調査は、RAN、国際労働権フォーラム(ILRF)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKの3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注6)がきっかけとなって実施されました。3団体の調査で、同社が所有・運営する農園で非常に高いノルマが課せられるために児童労働が行われたり、無給労働や不安定雇用、有害物質への曝露など深刻な労働権侵害が明らかになっていました。このような労働者の酷使は、これまで独立監査によっても確認されています。

●ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、そしてマースなど、多くのパーム油購入企業は、インドフードとの取引をすでに停止しています。しかし、インドフードの合弁パートナーであるペプシコ、ウィルマー、ヤム・ブランズなど多くの企業は現在もインドフードと合弁関係を継続しており、労働酷使とのつながりが残ったままとなっています。

●インドフードは、インドネシアの大財閥サリムグループ の一社で、商品の開発から生産、販売までをグループ企業内で総合的に行う垂直統合型企業です。パーム油事業は、アブラヤシ農園企業のインドフード・アグリ・リソーシズ(インドアグリ)の下で運営され、SIMPはインドアグリの子会社です。労働権侵害が問題となった農園は、SIMPの子会社のロンドン・スマトラによって運営されています。サリム・グループは、近年で最大級の熱帯林違法皆伐との関与も指摘され(注7)、金融セクターには迅速な対応が求められています。

注1)RSPO, “RSPO Secretariat’s statement on complaints panel decision regarding PT Salim Ivomas Pratama TBK”, 2019年3月1日

注2)RAN、「緊急プレスリリース:パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置 」、2018年11月5日

注3)インドフードからRSPO宛の手紙

注4)インドフードへ資金提供する金融機関については、同社の財務報告(2018年9月30日、英語)を参照のこと

注5)3メガバンクの方針について
・インドフードへの最大の貸し手であるみずほは、「責任ある投融資等の管理態勢強化について」(2018年6月)で、パーム油と木材に特化し、「人権侵害や環境破壊への加担を避けるため、持続可能なパーム油の国際認証・現地認証や(略)先住民や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行います」としている。
・SMBCは「事業別融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」(2018年6月)で、パーム油の農園開発向けの融資について「違法伐採や児童労働などの人権侵害が行われている可能性の高い融資を禁止します」と明記している。また、パーム油関連の顧客企業がRSPO、あるいはそれに準ずる認証機関の認証を取得しているかどうかを確認することも方針の中でも明記している。
・MUFGは「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」(2018年5月)で、「ファイナンスを禁止する事業」として「違法または違法目的の事業」「公序良俗に反する事業」を筆頭にあげています。

注6)3団体による苦情申し立て文書(英語)
苦情申し立ての概要(英語、2016年10月12日付け)

注7)RAN、「プレスリリース:新報告書『サリム・レポート』発表 日本のメガバンク3行、近年最大級の熱帯林違法皆伐とのつながりが判明」、2018年4月13日

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

お知らせ: 3/15 SDGsセミナー 「動物たちの最後の楽園 ルーセルの熱帯林を守ろう」〜インドネシア、パーム油の農園開発から森を守る取り組み〜

インドネシア・スマトラ島に広がる「ルーセル・エコシステム」と呼ばれる熱帯林は、絶滅危惧種のオランウータンやゾウ、トラ、サイが集う、世界中で唯一残された貴重な場所です。東京都の面積の10倍以上の天然の熱帯林が広がり、気候変動に大きな影響をもつ大量の炭素を貯蔵している泥炭湿地林も含まれます。この素晴らしい手付かずの森は世界的にはあまり知られていませんが、森の中の山岳地帯は世界自然遺産として保護対象となっています。

しかし、この「最後の楽園」ともいえる場所が、今、危機的な状況にあります。森林減少と動物たちの生息地が失われている主な理由の一つが違法なアブラヤシ農園開発です。ルーセルの森の破壊に関係している企業のパーム油は日本企業でも利用されています。

 

今回は、現地の問題に取り組む米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)のジェマ・ティラックが来日し、スマトラ島の貴重な熱帯林について現地からの目線で語り、日本の皆さんとこのルーセルの貴重な森をアブラヤシ農園開発による森林破壊からいかに守ることができるかを共に考える機会にしたいと思います。国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)では、2020年までに森林減少ゼロ、絶滅危惧種の保護、森林の大幅な回復を目標に掲げています。

スピーカー:ジェマ・ティラック
(レインフォレスト・アクション・ネットワーク 森林ポリシー・ディレクター)

コメンテーター:黒鳥英俊さん
(日本オランウータン・リサーチセンター代表、ボルネオ保全トラストジャパン理事)

開催概要

日時:3月15日(金曜日) 開場:午後6時 開演:午後6時15分 終了予定:8時半

場所:連合会館  住所:東京都千代田区神田駿河台3-2-11

アクセス:東京メトロ「新御茶ノ水駅」 B3出口すぐ、「淡路町駅」B3出口まで徒歩5分、都営地下鉄新宿線「小川町駅」B3出口まで徒歩3分、JR中央線・総武線「御茶ノ水駅」聖橋口より徒歩5分

参加費:無料(逐次通訳付)

主催:レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
協力:プランテーション・ウォッチ、地球人間環境フォーラム、熱帯林行動ネットワーク

問い合わせ&参加申し込み:

レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部
電話:03-6721-0441 メールアドレス:japan@ran.org

こちらのサイトにて参加をお申し込み下さい。
または、主催団体のレインフォレスト・アクション・ネットワークのe-mail(japan@ran.org)かFax(03-6721-0959)にて、セミナー名、お名前、ご所属、連絡先(メール、お電話番号)を明記の上、お申込みください。

「ルーセル・エコシステム」の動画

持続可能な開発目標:SDGs (Sustainable Development Goals)とは?

SDGs:持続可能な開発目標とは、2015年に国連サミットで採択された2030年を目標とした持続可能な開発のための国際合意です。17の大目標と169の個別目標が設定されています。なお森林の課題は2020年を目標としており、10年前倒しでの達成を目指しております。今回のセミナーは、以下の大目標と個別目標に特に関連した内容となっております。

ゴール15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および反転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る。

・ターゲット15.2: 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で持続可能な形での森林拡大と森林再生を増加させる。

・ターゲット15.5: 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅を防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。

ゴール6:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。

・ターゲット6.6: 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。

ゴール12: 持続可能な消費と生産のパターンを確保する

・ターゲット12.6: 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期的に盛り込むよう奨励する。

ゴール13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。

ターゲット13.3: 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、人的能力及び制度機能を改善する。
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プレスリリース:3メガ融資先のパーム油大手インドフード子会社、RSPO認証脱退を通知 (2019/1/28)

〜RSPOはインドフードの会員資格停止を警告〜
NGO、インドフードとの取引関係の停止をペプシコ、ウィルマー、銀行に訴え

サンフランシスコ発 ー インドネシアのパーム油大手インドフードの子会社が、世界最大のパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から脱退する計画を発表したことを受けて(注1)、25日(現地時間)、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKはコメントを発表しました。インドフードはインドネシア最大の食品会社で、世界最大の即席麺企業の一つです。また同社は、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

インドフードの農園で肥料袋を補充する女性労働者 ©︎RAN

インドフードは昨年11月、所有・運営するアブラヤシ農園におけるRSPO「原則と基準」での20件以上の違反とインドネシア労働法での10件の違反に対し、RSPOから是正措置計画の提出を求められていました(注2)。しかし期限を過ぎても提出がありませんでした。

OPPUKの専務理事ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「今こそインドフードの実情を批判すべき時です。同社は、高い基準では知られていないパーム油業界でも、特に悪質な労働習慣を持つ会社です。インドフードが『持続可能』とは程遠い企業であることは、私たちにとっては何年も前から周知の事実でした。今こそRSPOは自らの認定基準と会員規則を適用する時です。インドフードのRSPO認証からの脱退通知は、同社が組織的な労働搾取への対処を拒否していることを示す新たな証拠です」と批判しました。

RSPOによるインドフードのアブラヤシ農園の調査は、RAN、OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)の3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注3)がきっかけとなって実施されました。RSPOがインドフードの会員資格を停止すると考えられますが、まだ実施には至っていません。RSPOはインドフード子会社の脱退計画の通知を受けて同社に手紙を送り(注4)、1月24日の17時まで(ジャカルタ現地時間)に説明の返答を求めていました。インドフードはインドネシア最大のパーム油企業の一社ですが、RSPOが認証停止を実行した場合、RSPO会員資格を失う最大の企業になります。NGOはインドフードの動きを、労働者の権利を尊重する責任から免れるための企てであると批判していますーー RSPOも、会員企業が認証を脱退することで責任を逃れようとする動きを警告しています(注5)

RAN日本代表の川上豊幸は「インドフードといまも取引を続けている企業にとって、取引停止を考える最終段階に来ていることは間違いありません。ペプシコとウィルマーは、インドフードの子会社であるインドアグリからのパーム油調達を停止しています。両企業はインドアグリとの合弁事業の提携も解消すべきです。そして、日本の3メガバンクはインドフードへの融資を停止すべきです。そうでなければ、違法で非倫理的な行為を平気で行なっている企業との取引を、それと知りながら故意に続けていることになります」と訴えました。

昨年11月のRSPOによるインドフードへの制裁措置に先立ち、ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、そしてマースなど多くのパーム油購入企業は、インドフードとの取引をすでに停止しています。しかし、インドフードの合弁パートナーであるペプシコ、ウィルマー、ヤム・ブランズなど多くの企業は現在もインドフードと取引関係を継続しており、労働搾取とのつながりが残ったままとなっています。インドフードへの投資家や貸し手には、ブラックロック、ラボバンク、日本のメガバンクのSMBC、みずほ、MUFGが含まれます。

インドフードは、持続可能性への取り組みをインドネシア政府が導入する「持続可能なパーム油のインドネシア国内規定(ISPO)」に集中させると、RSPOへの告知文で述べています。しかしインドネシアの市民団体は、ISPO認証は持続可能なパーム油の実践を確かなものにするには不十分であると批判してきました。

RAN、ILRF、OPPUKの3団体はインドフードに対して、今も続く労働法違反への対処を引き続き求めていきます。また同社に対して、包括的な「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を導入し、自社だけでなく、同社を傘下に持つインドネシア最大の財閥であるサリム・グループ全体、そして独立系の供給業者にも適用するよう求めていきます。

注1)インドフードからRSPO宛の手紙

注2)RANプレスリリース「パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置」、2018年11月5日

注3)3団体による苦情申し立て文書(英語)、苦情申し立ての概要(英語、2016年10月12日付け)

注4)RSPO, “RSPO CEO’s Response to Letter from PT PP London Sumatra Indonesia Tbk (subsidiary of Salim Ivomas Pratama Tbk)”、 2019年1月24日

注5)RSPO、第15回年次総会 決議「GA15-6d」、2018年11月15日

参考
●インドフード社のESGリスクについての分析はRANブログ「3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク:インドフード社の事例」(2018年6月6日)参照のこと

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています。
http://japan.ran.org

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)
本件に関するお問い合わせ
広報 関本 Email: yuki.sekimoto@ran.org

メディア掲載:東洋経済オンラインでRANのインドネシア・パーム油農園での調査が紹介されました(2018/12/11)

東洋経済オンライン「3メガ融資先、パーム油生産大手で人権侵害 インドネシアで実態判明、ESG方針の試金石に」(2018年12月11日)〜RANによる、インドネシアの食品大手インドフードの農園における人権侵害の調査について紹介されました〜

こちらから全文がお読みいただけます。

 

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緊急プレスリリース:パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置 (2018/11/5)

インドフードの農園で働く少年 ©RAN

メディア掲載:雑誌『日経ESG』でRANのインドネシア・パーム油農園での調査が紹介されました(2018/12/8)

雑誌『日経ESG』1月号「NEWS 持続可能な調達:甘さが露呈した日本企業のリスク管理、人権侵害でRSPOが制裁」(2018年12月8日)〜RANによる、インドネシアの食品大手インドフードの農園における人権侵害の調査について紹介されました〜

この記事は2019年1月28日に日経ESGのウエブサイトにも掲載されました。

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