サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

‘パーム油’カテゴリーの記事一覧

緊急プレスリリース:パーム油大手インドフード、労働権侵害でRSPOの制裁措置 (2018/11/5)

〜日本のメガバンクが多額資金提供するインドネシアのパーム油企業、10件の法律違反と「重大かつ組織的な」違反で制裁〜 RAN、OPPUK、ILRF 3団体の苦情申し立てを経て

インドフードの農園で働く少年 ©RAN

 

 

 

 

 

 

 

インドネシアのパーム油大手インドフード社が、世界最大のパーム油認証制度である「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から制裁措置を通告されたことを受けて(注1)、本日5日、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUK、国際労働権フォーラム(ILRF)は、RSPOの決定を歓迎し、以下のコメントを発表しました。インドフードはインドネシア最大の食品会社で、世界最大の即席麺企業の一つです。また同社は、日本のメガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)から長期にわたって多額の融資を受けています。

【これまでの経緯】

●今回のRSPOによる調査は、RAN、OPPUK、ILRFの3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注2)がきっかけとなって実施された。苦情申し立てが行われる前から、インドフードが所有・運営する農園で深刻な労働権侵害が明らかになっていた。

●数年にわたる一連の独立調査により、インドフードはインドネシア最大のパーム油企業の一つであるにもかかわらず、RSPO基準や国内外の基準と法律に違反し、労働搾取の慣行に関与していることが明らかになった。労働搾取の慣行(注3)には、非常に高いノルマが課せられるために児童労働が行われたり、無給労働や不安定雇用、有害物質への曝露など危険性のある労働条件が含まれる。

【制裁の内容】

●今回のRSPOの監査により、インドフードの所有・運営する一部のアブラヤシ農園で、RSPOで求められる「原則と基準」での20件以上の違反と、インドネシア労働法について10件の違反が明らかになった。監査の範囲は、苦情の対象になった農園に限定。

●RSPOは、RSPO認証を取得しているインドフードのパーム油搾油工場1カ所と農園3カ所で調査を実施した。その結果「重大かつ組織的な性質の違反」があり、上記工場と農園のRSPO認証について即時停止が必要だとした。さらにRSPOは、同社子会社でRSPO認証を取得している他の全ての認証ユニット(農園、工場レベルなど)でも3カ月以内の全面的な監査を求め、監査の監視が必要であるとした。

 

OPPUKの専務理事 ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「インドフードは最悪企業の一つで、『持続可能な』パーム油認証を受け続け、パーム油産業全体とRSPOの評判を落としてきました。労働者のための正義を実現する第一歩として、インドフードは、今や何度も確認された長年にわたる労働権侵害を是正しなければなりません。RSPOはインドフードに責任をとらせなければなりません」 と訴えました。

今回の制裁措置に先立ち、ネスレ、ムシムマス、カーギル、日本の製油会社の不二製油、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、マースなど多くのパーム油購入企業はインドフードとの取引をすでに停止しています。

一方、日本のメガバンクは、インドフードと子会社にとって主要な金融機関です。 同社は2018年9月30日の時点で、日本の3メガバンクから730億円以上の融資を受けています(注4)。3メガバンクは今年5月と6月に社会と環境に配慮した投融資方針を初めて発表し、全ての銀行が違法行為への融資を禁止しています。インドフードへの最大の貸し手であるみずほは、パーム油に特化した方針で「人権侵害や環境破壊への加担を避けるため、持続可能なパーム油の国際認証・現地認証や(略)先住民や地域社会とのトラブルの有無等に十分に注意を払い取引判断を行います」としています。またMUFGとSMBCは児童労働を行っている事業へのファイナンスを明確に禁止しています。同時にSMBCは、パーム油関連の顧客企業がRSPO、あるいはそれに準ずる認証機関の認証を取得しているかどうかを確認することを方針の中でも明記しています。メガバンクと比較して、シティグループの対応は早く、今年4月にはインドフードのパーム油事業への全融資をキャンセルしました。

RANの責任ある金融 シニア・キャンペーナーのハナ・ハイネケンは「メガバンクは合法性、人権尊重、環境保護を方針に定めています。今回のRSPOによる制裁を受けて、メガバンクにはインドフードへの資金提供を停止することが求められています。 インドフードと同社の子会社に投資しているブラックロックや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もあらゆる資金を引き上げる必要があります」と訴えました。

ILRFの副事務局長のエリック・ゴットワルド氏(Eric Gottwald)は「今回の制裁措置は、RSPOやパーム油購入企業、金融機関にとって、労働搾取を禁止するための方針と方針実施を強化するための判断基準となるべきです。RSPOがこの決定までに2年もかけた間、労働者は基本的人権の侵害に苦しみ続けてきました。多大なリスクを抱えながら違反を報告した労働者たちには、もっと迅速で効果的な苦情処理プロセスが約束されなければなりません」と指摘しました。

RAN、ILRF、OPPUKは、インドフードが労働法違反に対処するためには以下の必要事項を求めます:

1) 農園での主要作業にかかわる全ての労働者に終身雇用を即時に約束して昇格させること
2) 労働者に生活賃金を保障し、天引きされた給料や給付金、昇給、そして無給業務を過去にさかのぼって補償すること
3) 結社の自由を全面的に尊重し、組合加入について全ての労働者に報復がないことを保証すること
4) 所有・運営する農園の女性労働者に起きている悪質な差別の解消に取り組み、女性の権利を保証すること
5) 労働者や労働者団体、独立した労働組合と協議の上、適正かつ透明性のある生産目標設定を確保すること

RAN、ILRF、OPPUKの3団体はインドフードに対して、包括的かつ期限を定めた「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)を自社だけでなく、同社を傘下に持つインドネシア最大の財閥であるサリム・グループ全体、そして独立系の供給業社にも導入し、実践するよう引き続き求めていきます。

注1)RSPO通告文書 “Complaints Panel’s Decision on PT PP London Sumatra Indonesia Tbk” (2018年11月2日、英語)
注2)3団体による苦情申し立て文書(英語)、苦情申し立ての概要(英語)
注3)2016年調査の追加報告書:RAN「プレスリリース:労働搾取、貧困水準の賃金、有毒な健康被害を起こし続けるインドネシアのアブラヤシ農園への邦銀からの融資について、最新レポート発表〜RSPO認証パーム油農園での労働酷使は1年半前の最初の問題発覚後も継続〜」(2017年11月28日)
注4)インドフードへ資金提供する金融機関については、同社の財務報告(2018年9月30日、英語)を参照のこと。

参考

●インドフード社のESGリスクについての分析は「ブログ:3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク: インドフード社の事例」(2018/6/6)を参照のこと。

●日本のメガバンクの投融資方針へのNGOの反応
・NGO共同声明「わずかな進歩だが、パリ協定目標達成には不十分、三井住友銀行が新融資方針を公開、石炭火力の制限示すも”例外”に言及」(2018/6/21)
・NGO共同声明「みずほFG新投融資方針策定、気候変動リスク管理に対する小さな前進、さらなる具体化が必要」(2018/6/14)
・NGO共同声明「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表」(2018/5/25)

 

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。

OPPUKは、インドネシア北スマトラのパーム油労働者の労働・生活状況に懸念を持つ学生運動と労働者によって2005年に設立されたインドネシアの労働団体です。OPPUKは労働者を組織し教育し、北スマトラとインドネシアの他地域でパーム油労働者の権利のための研究、政策提言、およびキャンペーンを実施しています。

国際労働権利フォーラム(ILRF)は、世界中の労働者のために公正かつ人道的な環境を達成するための人権擁護団体です。ILRFは子どもと強制労働、差別などの労働者の権利侵害を明らかにするために、労働組合とコミュニティベースの労働者の権利擁護団体と連携し、組織を作り団体交渉をしています。

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)


RIEFでRANアピール行動が紹介されました(2018/9/25)

RIEF(環境金融研究機構)、「環境NGOのRAN、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対し、改定した人権・環境方針への「実践」を迫る署名2万強を提出。『気候変動 への融資』の停止を求める」(2018年9月25日付)〜サンフランシスコでの三菱UFJへのRANアピール行動が紹介されました〜

「国際環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、本部米サンフランシスコ)は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がタールサンドのパイプラインや石炭火力発電、そして熱帯林破壊への資金提供等の「気候変動への融資」を増やしているとして、どう融資を止めるよう求める署名を提出した。署名は10日間で、2万4747人をグローバルに集めた。続きを読む

この件についての情報はこちら
「プレスリリース:三菱UFJ子会社のMUFGユニオン・バンクにアピール行動」(2018/9/15)

MUFGユニオン・バンクの本社前でアピールする人々

プレスリリース:三菱UFJ子会社のMUFGユニオン・バンクにアピール行動(2018/9/15)

〜三菱UFJに森林破壊と環境負荷が最も高い化石燃料への資金提供停止を求めて〜
「グローバル気候行動サミット」開催中のサンフランシスコにて

MUFGユニオン・バンクの本社前でアピールする人々

サンフランシスコ−−環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、14日(現地時間)、環境・人権・先住民族の権利を主張する人々とともに数十名で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)子会社のMUFGユニオン・バンクの本社前でアピール行動を行い、森林破壊及び環境負荷が最も高い「エクストリーム化石燃料」(注1)への資金提供を停止することで「気候変動への融資」を止めるようMUFGに求めました。MUFGは日本最大の銀行で、世界第5位の銀行です。このアピール行動は9月12日から14日にサンフランシスコで開催された「グローバル気候行動サミット」(GCAS)と国連の「責任投資原則」(PRI)主催で毎年開催される、責任ある投資家のための世界最大の国際会議「PRI in Person」にともなって行われました。

RAN責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「三菱UFJは、問題の多いタールサンドのパイプラインや世界中の石炭火力発電、そして熱帯林破壊への資金提供を通じて、気候変動に多額の融資をしています。ゼロ・カーボンの未来へ移行するためには、銀行は重要な役割を担っています。しかしあまりにも多くの銀行が化石燃料と森林破壊に資金提供を続け、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)の達成を弱めています。三菱UFJは今年になって融資・引受に関して環境と社会に配慮した方針を制定し、大胆な最初の一歩を踏み出しました。しかし、さらなる改善が求められます」と訴えました。

国際的なキャンペーン団体は、気候変動危機に「油を注ぐような」役割を果たす金融機関に対し、ますます働きかけを強めています。特に日本の銀行は、気候に損害をもたらす産業を支援し、非常に大きな地域的役割を果たしているため、キャンペーン団体から監視の対象とされています。MUFGは今年の株主総会で環境NGOの350.org から批判されました。

先住民環境ネットワークのコミュニティ・オーガナイザーで、シャイアン・リバー・スー族のジョイ・ブラウン氏は「三菱UFJのタールサンドやパイプライン建設企業への資金提供は大量虐殺的で、環境及び社会的配慮がほとんどされていません。銀行が私たちの民族や孫たちの生活を脅かし続けることを許しません」と声をあげました。ブラウン氏は以前、日本に留学生した経験もあります。

MUFGはこれまで、大問題となったダコタ・アクセス・パイプライン(DAPL)への融資で中心的な役割を果たす銀行に含まれていたため、論争と無縁だったわけではありません。DAPL建設はスタンディングロックでの数カ月にもわたる歴史的な抗議に火をつけ、国連の代表者は先住民の権利が侮辱されたと非難しました。MUFGは、他の化石燃料インフラ計画にも資金提供をしています。それには物議を醸したバイユー・ブリッジ、キーストーンXL、ライン3などのパイプライン建設計画が含まれ、エナジー・トランスファー・パートナーズ、トランスカナダ、エンブリッジといった北米のタールサンド・パイプライン建設企業への資金調達を通じて加担しています。RANが4月に発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表2018」(注2)に基づくと、MUFGは世界中の石炭火力発電所に資金提供し、2015年から2017年の間の石炭火力発電への融資・引受額では世界5位でした。

化石燃料だけでなく、MUFGは、気候変動を悪化させる熱帯林破壊と、関連する人権侵害に関わる企業へも資金提供していることがRANの調査で明らかになっています。インドフード社のようなパーム油大手企業にも融資を続けていますが、インドフード社は熱帯林破壊と労働者搾取が問題視されています(注3)。MUFGはインドネシアで事業を拡大しようとしているため、森林破壊と人権問題にさらされるリスクが増大する可能性があります。

今年5月15日、MUFGは融資・引受に関する広範な「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」を初めて制定しました。日本の3メガバンクの中でも初めての適用でしたが、気候変動がもたらす破壊的活動への融資・引受を終わらせるまでには至りませんでした。本日のアピール行動に集まった人々は、MUFGは社会及び環境への影響にしっかりと責任を果たしている企業にのみ資金提供し、持続可能な社会の実現に確実に貢献するよう、自社の方針を実行し、かつ強化するよう訴えました。

*MUFGの 環境方針、人権方針、取引先などに適用される環境・社会ポリシーフレームワークの制定についてはこちらをご参照ください。

NGO共同声明「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表」(2018/5/25)

注1)「エクストリーム化石燃料」は最も炭素集約度が高く財務上リスクのある燃料で、石炭採掘、石炭火力発電、エクストリーム・オイル(タールサンド、北極・超深海の石油)、北米での液化天然ガス(LNG)輸出ターミナルが含ま れる。

注2)プレスリリース:新報告書 「化石燃料ファイナンス成績表2018」日本語要約版発表(2018/4/9)

注3)参考:「3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク:インドフード社への事例」(ハナ・ハイネケン、「RIEF環境金融研究機構」への寄稿)

アピール行動の写真はこちらからダウンロードしていただけます。

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

ハーバー・ビジネス・オンラインでRANアピール行動が紹介されました(2018/7/9)

ハーバー・ビジネス・オンライン「地球環境を破壊する「無責任銀行ジャパン大賞2018」に三菱UFJ! みずほ・三井住友も温暖化や森林破壊を加速」(2018年7月9日付)〜NGO共同会見と、三井住友FG株主総会での森林保護方針強化を求めたアピール行動が紹介されました〜

「国際環境NGO「350.org Japan」は、温暖化を悪化させる地球環境に無責任な銀行「無責任銀行ジャパン大賞2018」として、三菱UFJフィナンシャルグループを選んだ。化石燃料への融資の多さがその選考理由となった。メガバンク他行では、みずほ銀行が石炭火力への融資の多さ、三井住友銀行は東南アジアでの森林破壊への関与が、グリーンピース・ジャパンやレインフォレスト・アクション・ネットワークなどの環境NGOから指摘された。(略)

環境NGO「レインフォレスト・アクション・ネットワーク」(RAN)のシニアキャンペーナー、ハナ・ハイネケン氏は「熱帯林伐採やそれに伴う森林火災、膨大な炭素をためこむ泥炭地の破壊は、温暖化を促進させています」と訴える。「しかし、熱帯林を保護すること、つまりCO2の排出源ではなく吸収源にすることで、トータルのCO2排出量を最大で3割減らすことができます」記事を読む

三井住友FG株主総会会場前で株主にアピール

プレスリリース:三井住友FG株主総会で森林保護方針強化を求めてアピール(2018/6/28)

「森林と人権を守るリーダーになってください」
〜森林破壊企業への資金提供停止を求める署名 約2万筆提出〜

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都新宿区、以下RAN)は、本日28日、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の第16期定時株主総会に参加し(注1)、同社の銀行業務における森林セクターの方針強化を求めるよう、会場前で株主にアピールしました。また本日の株主総会前に、SMFGへ署名19,581筆を電子メールで提出し、森林破壊と人権侵害を起こす企業への融資を即時停止するよう求めました。

RANのスタッフやボランティア8人は、株主総会会場の東京・丸の内の三井住友銀行本店ビルの前で「三井住友フィナンシャルグループ:森林と人権を守るリーダーになってください」と書かれたバナーを掲げ、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する投融資方針を強化すべきであるとアピールしました。また、森林破壊に脅かされるインドネシアのNGOとして現地の声を届けるために、TuK (トゥック)インドネシア副代表のエディ・ストリスノもアピール活動に参加しました。

RAN 責任ある金融シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「三井住友フィナンシャルグループは、先週、事業別融資方針の制定を発表し、環境・社会的責任を果たすための取り組みを進めてきました。しかし、SMFGは気候変動リスクのある石炭やタールサンドなどの化石燃料、熱帯林破壊や人権侵害を起こすパーム油や紙パルプなどの部門への主要な資金提供者となっています。このような事業への資金提供は同グループをESGリスクにさらすとともに、業界のリーダーとなれるはずの立場を危うくしています。パリ協定やSDGの森林減少阻止目標を達成するため、SMFGはESGに関する投融資方針を飛躍的に強化すべきです」と訴えました。

会場前では株主たちに『三井住友フィナンシャルグループの環境・社会・ガバナンス(ESG)の実績に関する独立評価レポート:森林と人権保護の金メダルを目指して』(注2)を配布し、情報提供も行いました。SMFGが、極度に環境へ悪影響を与える化石燃料に16.5億米ドル、東南アジアの熱帯林をリスクにさらす産品へ約4億米ドルの融資・引受を2016年に提供していたことや、インドネシアで児童労働を含む人権侵害、違法行為、森林破壊に関与する企業とつながっている事例を紹介しました。そして、SMFGは金融ポートフォリオで企業価値に悪影響を及ぼすESGリスクを評価及び開示すべきであると提言しました。

また、株主総会前の本日早朝、オンライン署名「Big Banks Financing Forest Destroyers(大手銀行、森林破壊者に資金提供)」(注3、英語)19,581筆を、SMFGに電子メールで提出しました。本署名はRAN本部のウェブサイトで6月26日と27日の2日間に集中して実施したもので、SMFGに、森林破壊と人権侵害を起こし、現地コミュニティを脅かす企業への資金調達を即時停止するよう求めています。

*SMFGは事業別融資方針を6月18日に制定し、石炭火力発電所、アブラヤシ農園開発および森林伐採を「環境や社会へ大きな影響を与える可能性が高い」事業として特定しました(注4)。

 

注1) RANは、森林セクターでの金融機関の責任と方針強化を求め、株主総会への参加のために、三井住友FG、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャル・グループの株式を最小単位で(100株)購入しています。

注2)三井住友FGは、持続可能性への取り組みをうたう2020年東京オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナー(スポンサー企業)です。※当日の配布資料をご希望の場合はご連絡ください。

注3)署名URL:https://www.ran.org/financing_destroyers

注4)三井住友FG「トップコミットメント」
三井住友FG「人権尊重に係る声明」
三井住友銀行「事業別融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)

NGO共同声明:「わずかな進歩だが、パリ協定目標達成には不十分」三井住友銀行が新融資方針を公開、石炭火力の制限示すも”例外”に言及(2018/6/21)

(English follows Japanese)

三井住友銀行が6月18日に石炭火力発電、パーム油、森林伐採についての新たな「事業別融資方針」の制定および「クレジットポリシー」の改定を公開した(注1)。環境NGO6団体は、方針表明を受け、石炭火力発電所と森林減少に対する融資方針を厳格化する姿勢を打ち出したことを歓迎する。一方、石炭火力セクターへの与信制限を明示しながら、実質的には現状容認となりうる抜け穴があるものと考える。日本3大金融グループの中で、地球環境に著しく悪影響を与える懸念のある特定セクターへの与信の対応を明確化したのは3社目である(注2)。

同発表において、三井住友銀行はメガバンクとしては初めて、石炭火力電力セクターへの「新規融資は国や地域を問わず超々臨界およびそれ以上の高効率の案件に融資を限定」することを明確にし、同セクター与信に対する具体的な制限を明記した。しかし、方針の中には「新興国等のエネルギー不足解決に貢献しうるなどの観点から、適用日以前に支援意志表明をしたもの、もしくは日本国政府・国際開発機関などの支援が確認できる」案件において「ポリシーの例外として、慎重に対応を検討」するという言及がある。これは”大きな抜け穴”となりうる可能性を持ち、この方針自体の意義を無効化しかねず、気候変動対策として評価できない。また、仮に高効率のものであっても、750kg/kWhものCO2を排出する新たな石炭火力発電所の建設は許されず、既存の石炭火力発電所であっても廃止していく必要があるという国連環境計画の勧告が存在する中、石炭火力発電を許容する方針は状況認識が甘いと言わざるを得ない。

さらに、三井住友銀行は大型の超臨界圧技術を用いたベトナムのギソン2石炭火力発電事業への融資を今年4月に決定している。これは、超々臨界圧より劣る大型の超臨界圧技術を用いており、「赤道原則」に違反している可能性もあると地域NGOに批判されている(注3)。こうした事業への融資は、三井住友銀行の今回の方針がこのような「大きな抜け穴」を許すものになりうることの証左である。

パリ協定の1.5~2℃目標達成のために、多くの銀行は石炭火力発電や石炭採掘事業への新規融資を禁止している。今回の三井住友銀行の石炭火力発電セクターへの与信制限に関する発表は明らかにこの水準に行き届いていない。6NGOは同社に対し引き続き、国内外の石炭火力発電事業や石炭火力発電に関与する企業への新規融資・引受から迅速に撤退する意思と工程をより明確にすることを求める(注4)。

三井住友銀行は「事業別融資方針」の中で、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)と同じく、石炭火力と同様に気候変動リスクを高めるパーム油・森林伐採にも触れている。しかしパーム油事業については、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証と同等の認証制度の有無を確認するだけでは森林減少、および気候への影響の高い泥炭地管理、人権侵害についての確認が不十分であり、広範に支持されている高炭素貯留アプローチ(HCSA)を義務付けるなど、追加的な確認項目を設定することが必要だ。また森林伐採への対応として、違法伐採や違法な焼却への融資を禁止することは前進だが、それだけでは「持続可能な開発目標(SDGs)」目標15にある2020年までに森林破壊を阻止することは満たせない。

三井住友銀行はSDGsへのコミットメントを表明しており、その中の目標13「気候変動に具体的な対策」について注力して取り組むとしている。私たちは同社が石炭からのダイベストメントを早急に進め、気候変動の緩和に重要な役割を果たす森林、特に熱帯林の保護などの取り組みも強化することを期待する。

国際環境NGO350.org日本支部 350.org Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
認定NPO法人 気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

注1:「事業別融資方針の制定およびクレジットポリシーの改定について」株式会社三井住友銀行(2018年6月18日)

注2:「NGO共同声明:みずほFG新投融資方針策定、気候変動リスク管理に対する小さな前進。さらなる具体化が必要」(2018年6月14日)、
「NGO共同声明:『小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要』三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表」(2018年5月25日)

注3:ギソン2石炭火力発電事業プロジェクトの環境影響評価においては代替案が検討されていない、住民協議が適切に行われていないなどの懸念があり、銀行による環境・社会リスク管理を定めた「赤道原則」に違反している可能性もある。

注4:「石炭火力発電事業及び石炭採掘事業への新規融資に関する要請」では国際環境NGO 350.orgの日本支部(350.org Japan)は賛同団体とともに、3大金融グループ゚に対して以下の対策を求めている。
1.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言にもとづき、温室効果ガスを大量に排出する分野への投融資状況を公開すること、
2.世界の平均気温の上昇を摂氏2度未満に抑えるシナリオに整合した事業戦略や明確な指標や目標を公表すること、
3.パリ協定の目標達成のため、石炭火力発電事業及び一般炭の採掘事業に関与する企業への新規融資を中止すること。

Environmental NGOs Evaluate SMBC’s New Sector Policies on Coal-fired Power, Palm Oil and Deforestation : “A policy showing little progress with a concerning loophole that does not align with the Paris Agreement”

350.org Japan
JACSES
Rainforest Action Network
Greenpeace Japan
Kiko Network
FoE Japan

June 21, 2018 Tokyo, Japan — On June 18, Sumitomo Mitsui Banking Corporation (SMBC) announced its “policy towards financing businesses with potentially significant adverse environmental and/or social impact” including coal-fired power, palm oil plantation developments and deforestation.

Environmental groups ー 350.org Japan, Japan Center for a Sustainable Environment and Society (JACSES), Rainforest Action Network (RAN), Kiko Network, Friends of the Earth Japan and Greenpeace Japan ー issued the following statement on SMBC’s new policies.

“We had high hopes for SMBC being the last of the major Japanese financial groups to announce an update of their social and environmental policy (1), following Mitsubishi UFJ Financial Group and Mizuho Financial Group. However we are very disappointed to see the visible loopholes in SMBC’s coal-fired power sector policy, which may defeat the purpose of the policy itself. There is also a lack of clarity around specific actions that the company will take on deforestation. While we welcome the fact that SMBC has shown a willingness to restrict coal financing and address deforestation, this announcement does not come even close to addressing the climate action needed in order to meet the goals of the Paris Agreement.

The decision that SMBC should have made here is to announce a stop to any new financing for domestic and foreign coal-fired power projects and companies involved in such projects, with a clear strategy and timeline. (2) SMBC’s recent decision in April 2018 to finance the Nghi Son 2 coal-fired power plant in Vietnam, which will utilize sub-critical coal technology and has been challenged by local groups for apparent violations of the Equator Principles, highlights the potential loopholes of its coal policy.

On deforestation, SMBC should have laid out clear criteria for halting deforestation and protecting carbon-intensive peatlands. Its mere reliance on weak certification systems and national laws is clearly not enough.

SMBC states that they are committed to the Paris Agreement and the SDG goal of “tak[ing] urgent action to combat climate change and its impacts.” We urge SMBC to step up their game by making immediate steps towards divesting from coal and strengthening their policies on deforestation.”

The NGOs also provide the following detailed analysis of the policy which reveals glaring inconsistencies:

“In the document, SMBC states that it will limit lending to coal-fired power plants that “use ultra-supercritical or more advanced technologies which are considered highly efficient.” Firstly, the policy’s inclusion of financing for any type of coal-fired power is insufficient when research endorsed by the United Nations Environment Programme clearly indicates there is no space to build any more new coal-fired power plants – no matter how efficient – in order to keep global temperature rise well below 2 degrees. More worrisome is the fact that SMBC states it will make exemptions for projects that [they have] already committed support […] or where the Japanese government or Multilateral Development Banks support.” This is a major loophole that will likely nullify the limitation that is set in the first place.

SMBC, like Mizuho Financial Group, also references palm oil and logging, which are significant causes of deforestation, which in turn contributes to climate change. However, for palm oil, mere reliance on the Roundtable for Sustainable Palm Oil (RSPO) or equivalent certification systems is not sufficient to address deforestation, management of carbon-intensive peatlands or human rights, and additional measures are necessary, including use of the High Carbon Stock Approach. Additionally, SMBC’s policy to prohibit financing to businesses involved in illegal logging and illegal land clearance activities is a good start, but not sufficient to achieve zero deforestation by 2020 as stipulated in Sustainable Development Goal (SDG) 15. ”

Notes to the editor

1. Sumitomo Mitsui Banking Corporation: Establishment of policy for businesses associated with Environmental and Social risk
2. 350.org Japan and supporting NGOs are currently running a global petition calling upon Japan’s three biggest financial institutions — Mitsubishi UFJ Financial Group, Mizuho Financial Group, and Sumitomo Mitsui Financial Group — to: i) disclose financial exposure to carbon intensive industries in line with the Task Force on Climate Related Financial Disclosures (TCFD); ii) outline business strategies and clear targets and metrics to align their finance policies with the Paris Agreement; iii) cease all new lending to coal fired power generation and coal extraction projects and companies involved in such projects.

For more details please see: http://world.350.org/east-asia/divest-from-coal-en/

CONTACT:

Shin Furuno, 350.org Japan: shin@350.org
+81(0)3 3230 7600 / +81(0)70-2793-3648

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