サンフランシスコに本部を持つ米国の環境NGO RAINFOREST ACTION NETWORKの日本代表部です

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ブログ:三菱UFJは、森林保護、気候変動対策、人権尊重の強化を(2020/5/8)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は持続可能な社会の実現に貢献すると約束しているにも関わらず、実際は、森林破壊と気候変動を加速し、人々の生活を脅かしています。このような問題に対応すべきESG(環境・社会・ガバナンス)与信方針も、4月のみずほフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の方針発表で、遅れを取ってしまいました。これではサステナビリティ・リーダーにはなれません。MUFGは、実際どのような批判対象となる投融資を行なっているのでしょうか?

熱帯林を破壊しているパーム油企業等に投融資

MUFGは、熱帯林破壊を加速しているパーム油部門に、世界で最も融資している金融機関の一つです。二酸化炭素の吸収源として、そして大半の陸上生物多様性の生息地としても重要な役割を果たす熱帯林は、パーム油や紙パルプ等の生産のために急速に失われています。森を長年守ってきた地域住民の生活と権利も脅かされているのです。

MUFGは、熱帯林の重要性を認識しつつも、保護に必要な対策を十分に取らず、熱帯林を破壊している企業に融資を続けています。これでは、2020年までに森林減少を阻止しようという国連「持続可能な目標」(SDGs)の目標15を実現することはできません

インドネシア、スマトラ島・アチェ半島上空。Duta Rendra Mulyaによる森林破壊の光景。

気候危機を悪化している石炭、石油ガスの拡大へ投融資

パリ協定が採択された2015年以降の4年間、MUFGは化石燃料部門に1,188億ドル(約12.7兆円)の融資・引受を提供し、その金額は世界6位、国内ではトップの金融機関でした。最近の資金使途には、ベトナムでの新規石炭火力発電所の他、高炭素で汚染リスクが高いオイルサンド・パイプライン建設やシェールガス開発、そして巨大炭鉱事業にも融資しているのです。

科学的知見によれば、パリ協定の目標を満たすためには化石燃料の拡大を直ちに止める必要がありますが、MUFGは化石燃料への投融資を段階的にやめる約束を一切していません

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MUFGが真のサステナビリティ・リーダーになるには、社会的責任を果たしている他の大手金融機関のベストプラクティスを見習い、ESGに関する投融資方針とその実施を次のように強化する必要があります

1. 森林、特に熱帯林に影響を及ぼす林業・農業関連企業には、ベストプラクティスである「森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」基準遵守を要求すること

2. パリ協定の1.5度目標に沿って、化石燃料への投融資を段階的に停止し、化石燃料を拡大させる投融資は直ちに止めること

3. 人権、特に先住民族の権利を尊重し、人権侵害を起こすプロジェクトには投融資をしないこと

4. 高リスク部門をはじめ、ESGリスクの管理・監督の実効性を向上すること

もっと知りたい方はこちらへ:

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ブログ:東京五輪の木材スキャンダル、持続可能性と説明責任に問題あり(2019/9/9)

責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

2020年の東京五輪開幕まで1年を切りました。東京2020大会の主催者が「持続可能なオリンピックを開催する」という約束をしっかり守っているかどうか、今こそ現状を把握しなければなりません。

答えを一言でいうと、主催者は約束を守っていません。そして、自分たちの過ちを隠そうとしています。

NGOによる継続的なキャンペーンの成果で、東京2020組織委員会は競技会場の建設で使われた熱帯材合板の数量の情報を開示しました。その結果、21万枚以上もの膨大な量の熱帯林由来の合板が建設に使用されたことがわかり(2019年5月末時点)、私たちNGOは衝撃を受けました。そして、その半数以上が「新国立競技場」の建設で使われていたことも判明しました。実際「夢の島公園アーチェリー会場」を除いて、東京2020大会のために新たに建設されるほとんどの競技会場ではマレーシアまたはインドネシア産の熱帯材合板を使用しています。

2018年秋、レインフォレスト・アクション・ネットワークは、協力団体の TuKインドネシアとWALHIと行った共同調査で、東京五輪の主なコンクリート型枠サプライヤーであるコリンド社が、世界で最も豊かな生物多様性を誇る熱帯生態系で森林伐採を行ない、地域コミュニティの土地を違法に強奪していたことを明らかにしました。私たちは、コリンド社が住友林業を通じて供給した木材について、東京の五輪施設建設現場から、パーム油生産のために伐採されたインドネシアの原生林までのサプライチェーンを追跡しました。また、絶滅が危惧されるボルネオ島のオランウータンの生息地からも、コリンド社が木材を調達していたことも突き止めました。これは最悪の持続可能でない調達でした。現地を取材した映像をご覧ください。

*動画「守られなかった約束: 東京五輪がインドネシアの森林減少に加担」
撮影地:インドネシア 東カリマンタン州、撮影日:2019年3月
解説:オランウータン専門家 ハルディ・バクチャントロ氏
(Centre for Orangutan Protection 代表)

そこで私たちNGO3団体は、3つの五輪主催者(東京2020組織委員会、東京都、日本スポーツ振興センター(JSC))それぞれに2件の苦情を通報し、是正を求めました。さらに「ともだち」のオランウータンの「ストロベリー」といっしょに、サンフランシスコの日本国総領事館で要請文を手渡しました(動画)。そしてRAN会員らの協力を得て、東京五輪主催者が、森林減少、人権侵害、生息地喪失に拍車をかけていることを批判し、持続可能性についての約束を守るよう求める声を上げました。

東京2020組織委員会の名誉のために伝えておくと、一定の進展はあったものの、熱帯林を保護し、五輪の影響を受けている地域コミュニティの権利を尊重するには決して十分とは言えません。

2019年1月、東京2020組織員会は「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を改訂し、パーム油生産などのために大規模農園に転換された森林で伐採された木材の調達を明確に排除しました。国際オリンピック委員会(IOC)は「持続可能な調達に関する指針」(Olympic Games Guide on Sustainable Sourcing)を2019年4月に発表し、「森林減少ゼロ誓約に関する進捗状況をモニタリングし、保護価値の高い森林環境の保護を促進する調達方針」の採用を求めました。こうした対策は適切なように見えますが、結局は実施と執行状況次第です。残念なことに今年の7月、高リスクのマレーシア・サラワク州産熱帯材合板が、五輪施設の建設でいまだに使われていることがわかりました。東京2020組織員会ら主催者は、自分たちの調達方法の失敗を全く認めていないようです(参考:「持続可能性進捗状況報告書」)。

同様に懸念されるのは、東京五輪主催者がすでに起こした被害について、いまだに責任を問われていないという事実です。この記事を書いている時点で、私たちNGOが提出した6件の苦情のうち3件は却下され、そのうちの1件は非常に疑問の残る理由で却下されました。それは、コリンド社の木材使用に関して、有明アリーナを管轄する東京都に通報した苦情です。通報してから音沙汰がないまま数カ月が経った後に、木材供給会社から受け取った情報と矛盾するという理由で却下されました。しかもそれはNGOの苦情が通報された「後」に会社から提供された情報で、私たちには開示できないと言われました。この苦情が対象案件として正式には受理されないままとなっていたにも関わらずです。これは「苦情処理メカニズム」のあるべき姿ではありません。少なくとも、世界で通用する国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に説明されている原則に沿っていません。皮肉なことに、日本政府も東京2020組織委員会いずれもこの指導原則を支持しており、彼らの言葉と行動が一致していないことは明らかです。

では、私たちは何をしてきたのでしょうか? まず第一段階として、国際オリンピック委員会(IOC)に上記の問題を提起しました。定期的に開催されるIOCと東京2020主催者の間の調整委​​員会合の数日前に、私たちは東京五輪の苦情処理メカニズムが実際に機能しているか、また「ビジネスと人権に関する指導原則」と一致しているかどうかを、徹底的に調査するよう求める書簡 を送りました。

一方で、私たちNGOは、木材以外で熱帯林と人権をおびやかすような東京五輪の調達事例、特に紙・パルプおよびパーム油の調達にも注意を払っています。ご存知の通り、日本は、炭素集約度の高いインドネシアの熱帯泥炭地で生産されたパルプを原料とする紙製品の大量消費国です。また、ますます多くの日本企業が自社製品にパーム油を使用するようになっています。そのため、今すぐ行動しなければ、東京五輪によってさらなる被害が熱帯林に及ぶことが非常に現実的になっています。

東京五輪に関する話題はまだ続きます。

動画「東京五輪開幕まで1年 熱帯林の破壊をやめて!」アピール行動
(2019年7月、東京国際フォーラム前にて)

英語のブログはこちら(2019/8/7)

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

地上に残された貴重な森「ルーセル・エコシステム」が破壊の危機に(2019/5/15)

日本代表 川上 豊幸
(本記事は地球・人間環境フォーラム『グローバルネット』(2019年5月号)に寄稿したものです)

「ルーセル・エコシステム」は、インドネシア・スマトラ島北部に位置し、まとまった形で残されたアジア最大の熱帯林地帯の一つです。長野と新潟の2県の広さに匹敵する約260万haの広大な地域に、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが大自然の中で共存する地球上で最後の場所です。この豊かな生物多様性ホットスポットは、良質な水の安定供給、漁業に最適な環境、洪水や干ばつの防止、農業に適した気候に加え、小規模分散型の水力発電の可能性、観光にもってこいの自然美、生物多様性の提供など、地域社会の経済や地球の気候や環境にとって重要な利益をもたらしています。山岳地帯は世界遺産に指定されていますが、森林地帯はパーム油や紙の原料を得るためのプランテーション開発の危機にさらされており、保全を求める声が世界から集まっています。

生物多様性の重要性とルーセルの二つの森

科学者や自然保護活動家たちは多くの理由から、ルーセル・エコシステムを「保護価値の高い(HCV)」地域に分類しています。この地域には山地林と低地林の2種類の森林があります。山地林には絶滅の危機に瀕する希少種のスマトラサイが生息し、野生では100個体以下しか残っていません。またスマトラサイが餌とする多様な植物が生育し、種の生存にも不可欠です。シカ、クマ、トラ、ウンピョウなどの大型動物も生息しています。低地林も重要で、ルーセル・エコシステムで最も高い生物多様性が存在しています。世界で最大かつ最も背が高い花の2種、ラフレシアとスマトラオオコンニャクが見られ、また地域で最も樹高のある木々が育ち、スマトラオランウータン、トラ、ゾウ、サイなどの絶滅危惧種やマレーグマに貴重な生息地を提供しています。さらに、ウンピョウ、サイチョウ、また、多くの種類の霊長類や、サル、シカ、昆虫、両生類、爬虫類、鳥類の個体群を支えています。

絶滅が危惧されているスマトラオランウータン (©Paul Hilton/RAN)

地球規模の気候変動に効果のある「炭素貯蔵吸収スポンジ」

ルーセル・エコシステムには、何十億tもの高濃度炭素を蓄えた三つの主な泥炭地、トリパ、シンキル、クルエットがあります。その泥炭の深さは12m以上に達し、面積は香川県ほどの約18.4万ha以上に達します。これらの泥炭地では木が自然に枯れて、湿った地面に倒れ、通年浸水しているため、木々の落ち葉や枝、倒れた幹はゆっくりと炭素豊かな泥炭へと変化します。こうして何世紀にもわたって、水の下の深い泥炭堆積物の中に炭素が貯蔵され、隔離された炭素は放出されず、地球温暖化の緩和に役立っています。一方で、泥炭地が農地転換され、排水されると、大規模な酸化で炭素が一気に大気へ放出され、温暖化を進める二酸化炭素(CO2)が大気に蓄積されてしまうのです。

アブラヤシ農園の開発による森林破壊とパーム油

過去30年間、大規模アブラヤシ農園企業と紙パルプ企業が、農園や植林地を拡大するため、数百万haもの泥炭地で森林を伐採し排水してきました。乾燥した泥炭は可燃性が高く、度重なる火災で膨大な量のCO2が放出されます。インドネシアの泥炭火災のCO2の排出量1年分は、西欧全体の化石燃料排出量と同等と推定され、同国は中国と米国に次いで世界第三位のCO2排出国です。

現在、この泥炭地を含む低地林とそこに依存する動植物は、アブラヤシ農園拡大が原因で最大のリスクに直面しています。専門家は、ルーセル・エコシステムの低地林や泥炭地が破壊されると、スマトラオランウータンが野生下で絶滅する最初の類人猿となる可能性があると警告しています。そんな負の遺産は残すべきではありません。

この人為的災害は世界的なパーム油需要の急増によるものです。パーム油は世界で最も広く使用されている植物油で、主にインドネシアやマレーシアで栽培され、世界中に輸出されています。今やアブラヤシ農園はルーセル・エコシステムを含むインドネシアの熱帯林の中心部へと深く侵入し、同時に土地収奪、地域住民との紛争、人権侵害、汚職、労働搾取も引き起こしています。

アブラヤシ農園開発のために伐採されるルーセル・エコシステムの低地林(©Paul Hilton/RAN)

ルーセル・エコシステムを救うために私たちにできること

このような問題を解決するには、消費者や企業による「責任あるパーム油」の需要拡大と、問題のある「紛争パーム油」の排除が必要です。パーム油生産者、加工業者、貿易業者、資金提供者、消費財メーカーに原材料から問題を抱えているパーム油を除外するよう大きな声を届け、購買力を使って働き掛ければ、企業はビジネスのやり方を変えざるを得なくなります。

また、俳優のレオナルド・ディカプリオら有名人も取り組む世界的キャンペーン「ルーセルを愛そう」に参加し、この問題を日本でも広く知らせ、企業に問題への対処を促すこともできます。

米国の環境NGOのRANは、1985年の設立以来、環境・森林保護と先住民族や地域住民の権利擁護活動を行ってきましたが、2013年からはスナック食品企業20社に対して責任あるパーム油調達を求めています。多くの企業が改善へと動く中、日清食品と東洋水産は最も対応が遅れています。主な即席麺製品には大量のパーム油が使用されていますが、2社はパーム油調達方針の策定はしたものの不十分で、森林破壊に直接関係したり、オランウータンの死亡や住民立ち退きへの関与リスクが高いパーム油を排除する対応が不足しています。とくに日清食品は持続可能な大会を目指す東京五輪のスポンサーであり、RANでは同社に改善を求める国際署名を行っています。

また金融機関に紛争パーム油やルーセル・エコシステムの破壊に資金を提供しないよう求めることもできます。過去5年、アジアの一部の銀行は森林破壊のリスクがある事業の最大の資金提供者であり、日本の3メガバンクが融資するパーム油企業でも、労働権侵害、土地紛争、違法なアブラヤシ農園、森林減少などのリスクに直面しています。

一人ひとりが企業や政府が自然保護への誓約を守り、企業や銀行が自社の行動に責任を持つよう働き掛けることで、問題解決に向けた動きがうねりを作って変化につながると考えています。

ブログ:「MUFGユニオン・バンク、気候変動に融資しないで」グローバル気候行動サミットに合わせて(2018/9/20)

ユニオン・バンクの親会社、三菱UFJに環境負荷が高い化石燃料と森林破壊への資金提供停止を求めて

責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

ゼロ・カーボンの未来へ移行するためには、銀行は重要な役割を担っています。しかし残念ながら多くの大手銀行は、自然エネルギーなどの持続可能で正しい解決策よりも、化石燃料と森林破壊に多くの資金を提供しており、環境と未来の両方を危険にさらしています。

「グローバル気候行動サミット」(GCAS) は、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事の主催で2018年9月に開催され、大企業が気候変動への新たなコミットメントを発表する機会としてPRされていました。しかし実際は数千人規模の街頭抗議が起き、抗議した人々は、GCASは企業の「グリーンウォッシュ」(*)の場で、他の場所も汚染する新たなお墨付きを与えてしまうと批判しました。*環境配慮の実態がないにも関わらず、あたかも環境に配慮しているように見せかけること。

MUFGユニオン・バンクの本社前でアピールする人々

一週間にわたって、数千もの人々や様々な団体、環境破壊の最前線で抵抗するコミュニティのリーダーたちが気候正義を求めて抗議活動を行いました。GCAS最終日の9月14日、RANら活動家は、ユニオン・バンクのサンフランシスコ本社前に集まり、同銀行の親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対して「気候変動に融資しないで」と横断幕を掲げ、気候変動への資金提供停止を求めました。MUFGは日本最大で世界第5位の銀行ですが、実は、気候変動を引き起こしている企業に多額の融資を行なっています。そういった企業は熱帯林を破壊し、世界で最も多くの二酸化炭素を排出する化石燃料を開発して輸送し、燃やしています。

MUFGは、物議を醸している「ダコタ・アクセス・パイプライン」(DAPL)への融資で中心的な役割を果たした銀行の一つでした。この1,172マイル(約1,875km)にもおよぶ石油パイプライン事業は、米国ノースダコタ州スタンディングロックでの数カ月にもわたる先住民族主導による歴史的な抗議に火をつけました。同事業は、国連の代表者らにも先住民族の権利を侮辱したとして非難されています。

MUFGは、他の化石燃料インフラ計画にも資金提供をしています。それには、物議を醸した「キーストーンXL」や「ライン3」といったタールサンド・パイプライン計画、「バイユー・ブリッジ・パイプライン」計画が含まれ、エナジー・トランスファー・パートナーズ社、トランスカナダ社、エンブリッジ社への資金調達を通じて加担しています。RANが4月に発表した「化石燃料ファイナンス成績表2018」に基づくと、MUFGは世界中の石炭火力発電所に資金提供し、2015年から2017年の間の石炭火力発電への融資・引受額では世界5位でした。

シャイアン・リバー・スー族のジョイ・ブラウンさんは、RANとともに、MUFGへの抗議活動に参加しました。彼女は先住民環境ネットワークのコミュニティ・オーガナイザーで、ダコタ・アクセス・パイプライン計画への抗議活動に初日から参加してきました。

ブラウンさんは「三菱UFJのタールサンドやパイプライン建設企業への資金提供は大量虐殺的で、環境及び社会的配慮がほとんどされていません。銀行が私たちの民族や孫たちの生活を脅かし続けることを許しません」と声をあげました。ブラウンさんらは、MUFGの代表取締役に宛てた手紙をユニオン・バンクに手渡し、持続可能な未来の障害となる企業とのビジネスをやめるよう求めました。

MUFGは、化石燃料に固執する企業だけでなく、熱帯林を破壊し、熱帯林破壊に付随して起こる人権侵害や労働権侵害を行っている企業にも多額の資金を提供しています。MUFGは、インドフードなどパーム油大手企業にも融資を続けていますが、こういった企業は熱帯林破壊と労働者搾取が問題視されています。MUFGはインドネシアでの事業拡大の計画があり、森林破壊と人権問題にさらされるリスクがさらに大きくなる可能性があります。

2018年5月15日、MUFGは融資・引受に関する広範な「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」を初めて制定しました。これは日本の三メガバンクでも初めての取り組みで、大胆なステップだったといえます。同方針は環境保護に関していくつかの重要な基準や人権尊重を明確に誓約している一方で、気候変動による破壊をもたらす活動への資金提供停止を約束するまでには至りませんでした。現在でもMUFGは、重大な社会・環境影響を引き起こす企業に資金提供を続けています。

MUFGは現行の方針を完全に実践し、かつ方針をさらに強化して、持続可能な未来に貢献することを確かにする必要があります。今こそ、人々と地球を守ることができる方針を制定し、その理念を実際の行動に移すことで、5月に始めた環境・社会配慮への取り組みを完成させるチャンスです。世界はこれ以上待てません。

関連資料
プレスリリース「三菱UFJ子会社のMUFGユニオン・バンクにアピール行動」(2018/9/15)

署名「MUFGユニオン・バンク、気候変動に融資しないで」(英語、MUFG stop bankrolling climate change!)

写真はこちらから

原文:“RAN targets MUFG Union Bank during Global Climate Action Summit: Climate activists demand that parent company MUFG end financing of extreme fossil fuels and deforestation” , September 20, 2018(和訳は2019年5月17日に投稿しました)

ブログ:3大メガバンクが直面するパーム油セクターのESGリスク: インドフード社の事例(2018/6/6)

責任ある金融 シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケン

(本ブログは、RIEF環境研究機構に2018年6月6日に寄稿したものです)

インドフード・スクセス・マクムル社(インドフード:IDX: INDF)は、インドネシア最大の食品会社です。インドネシアの大財閥であるサリム・グループの一社で、同財閥の最高経営責任者のアンソニー・サリム氏はインドフードの最高経営責任者でもあり、インドネシア第4位の富豪です。日系企業ではアサヒグループホールディングス、王子製紙ともそれぞれジョイントベンチャーを設立しています。

2016年以降、インドフードはパーム油事業に関連する深刻な人権侵害について、買い手企業、金融機関や投資家、NGOなどから厳しい監視を受けています。最近では人権侵害以外にも、サリム氏が間接的にコントロールする企業が過去5年で、インドネシアの約1万ヘクタールの泥炭地を違法に皆伐したことが明らかになりました。炭素集約度の高い泥炭地では、1ヘクタール当たり、多いもので100トンの二酸化炭素を排出するという分析もあります。1万ヘクタールでは毎年100万トンを排出する計算になり、これは230万バレルの石油を燃やすのとほぼ同じ排出量になります。

このような問題があるにもかかわらず、同社は前述のように様々な日本企業とビジネス関係を持ち、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を含む、社会的責任や環境への責任を掲げる多くの銀行や投資家から多額の投融資を受けています。またシティグループ、ブラックロックなどの大手金融機関や投資家も多額の投融資をしています。

投融資の決定において「環境、社会、ガバナンス」(ESG)の重要性を認識する銀行や投資家が増えている中で、インドフードの事例はESGへの配慮がまだまだ不十分であることを示しています。

 

森林リスク産品セクターにおけるESGリスクと金融セクターのエクスポージャー

東南アジアは現存する世界最大の熱帯林地域の一つです。しかし急速な森林減少が続いており、その大部分はパーム油、紙・パルプ、木材、天然ゴム(以下、「森林リスク産品」と総称)などの少数の産品によって引き起こされています。これらの森林リスク産品セクターは気候変動、生物多様性の損失、土地収奪、労働者の酷使、贈収賄、違法行為など重大なESGの問題に直面しています。こういったリスクは、業務停止、買い手企業からの契約解除、訴訟などの重大なリスクを引き起こすことで、金融セクターに直接的な影響をもたらし、最終的には顧客企業の債務不履行や投資収益率の悪化だけでなく、金融機関自身の評判低下など、様々なリスクの結果として、投資家や銀行に財政的な損失を与えます(詳細はRANのレポート「投資家には責任がある」をご参照ください)。

これらのリスクにもかかわらず、RANの「森林と金融」の調査によると、大手銀行や投資家、特にアジアの銀行・投資家は、インドフードのようなESGリスクが大きな企業を含めて、このセクターに多額の投融資を行っていることが明らかになっています(下記参照)。

企業融資および引受(国別・セクター別)2010-2016年。単位は10億米ドル
出典: forestsandfinance.org

インドフードおよび関連企業のESGリスク インドフードのサプライチェーン上流におけるパーム油事業のESGリスクは、どの銀行や投資家にとっても憂慮すべきことです。重要なリスクには以下が含まれます。

  • 労働者の酷使:児童労働の使用、危険な労働条件、最低賃金以下の賃金など、インドネシアの20の労働法への組織的な違反についての証拠があります。このような労働者の酷使状況は2016年6月に初めて明らかにされ、2017年11月にRANとパートナー団体によって行われた調査を含めて繰り返し確認されており(詳細はこちら)、また、今年3月を含めて2度、独立監査によって確認されています。
  • RSPO認証基準の違反:インドフードのパーム油生産子会社は、労働搾取の嫌疑について「持続可能なパーム油に関する円卓会議」(RSPO)から苦情申立によって調査されており、認証停止を勧告されるリスクがあります。RSPOがパーム油生産のIOIグループに対して認証一時停止を勧告したときは、27社のバイヤーが取引を停止し、株価が20%下落しました。インドフードの有力な合弁パートナーであるペプシコ社は最近、インドフードのパーム油生産子会社からのパーム油の直接購入を中止しました。他のバイヤー(ケロッグ 、ゼネラルミルズ 、マーズ 、ハーシー 、ロレアル など)もエクスポージャーの軽減に動いています。今年6月にはRSPOの監査が予定されており、100の機関投資家(その資産は合計3.2兆米ドル)がその結果を注視していることを公表しています。
  • 問題のある土地利用:インドフードの子会社であるインドフード・アグリ・リソーシズ(インドアグリ)の農園用地の42%、つまり23万ヘクタールの土地は、地域コミュニティとの紛争、労働争議、開発を制限する環境規制、事業管理地の地図の未公開などのためにその正当性が疑われています。森林リスク産品のESGリスク分析を専門とする研究イニシアチブであるチェーン・リアクション・リサーチによると、これはインドフードおよびインドアグリと、インドフードの親会社であるファーストパシフィックに大幅な株価下落のリスクをもたらしています。
  • 供給源の非公開:インドアグリの製油所で生産される未精製のパーム油の36%は原料の供給源が公開されていないことが判明しており、このことは買い手企業および投資家や銀行にサプライチェーン及びレピュテーションリスクをもたらすと分析されています。

インドフードとサリム・グループ傘下企業は、コーポレート・ガバナンスの欠陥 についても批判されており、これは森林減少リスクを助長する「リスク乗数」とみなされています。 ワシントンDCを拠点とするコンサルティング会社のクライメート・アドバイザーとインドネシアの政策研究団体アウリガは、「企業はインサイダー情報や複雑な企業構造を利用して業績不振や違反行為を隠蔽することができます。リスクが隠されることで投資家や融資機関が十分な情報に基づく投融資決定を行うのが困難になり、アカウンタビリティが低下します」と説明しています。彼らの調査によると、インドフードの子会社で、上場しているパーム油製造企業の2社、サリム・イボマス・プラタマとロンドン・スマトラは「インドネシアの1999年の独占禁止法違反の嫌疑がかけられている」ことが指摘されています。

インドフードの最高経営責任者のアンソニー・サリム氏はまた、インドネシアの熱帯林と泥炭地の皆伐を続けている民間プランテーション事業への関与をめぐって、人々の関心を広く集めています。今年4月、サリム氏がアブラヤシ農園企業のドゥタ・レンドラ・ムルヤ(PT Duta Rendra Mulya:DRM社)とサウィット・カトゥリスティワ・レスタリ社(PT Sawit Khatulistiwa Lestari: SKL社)を財務面で間接的にコントロールしていたり、共同出資者を通じてつながっていることが明らかにされました。これらの企業は2013年から2017年までの期間、ボルネオ島のケタンガウ(Ketungau)で約1万ヘクタールの炭素集約度の高い泥炭地を不法に皆伐したことが明らかにされています。その多くはインドネシア政府によって保護対象として区分されている区域でした。これらのプランテーション資産は、買い手企業の「森林破壊なし、泥炭地なし、搾取なし」( No Deforestation, No Peatland and No Exploitation:NDPE)の方針、およびインドネシア政府の泥炭地および森林保護の法律・規則のために座礁資産化するリスクがあります(詳細についてはこちらをご参照ください)。

SKL社によって皆伐された土地のドローンによる検証(2017年11月4日)
出典:Aidenvironment, Palm oil sustainability assessment of Salim-related companies in Borneo peat forests, April 2018

金融セクターのエクスポージャーと対応(または不対応)

サリムグループ企業が直面する様々なESGリスクへの金融セクターの対応は弱々しく、期待外れです。これは彼らの持続可能性と人権へのコミットメント、さらには合法性へのコミットメントに対してさえ、重大な懸念をもたらすものです。

サリム・グループの主な融資元、引受機関、投資者。
出典: forestsandfinance.org, Indofood Financial Statements & Bloomberg

 

上の図が示すように、有名な銀行や投資家がサリム・グループの傘下企業に数十億ドルを投融資しています。貸し手のトップ3は、インドネシアの大手銀行のバンク・セントラル・アジア、みずほ、SMFGです。また、三菱UFJはインドフードに直接融資しており、GPIFはインドフード、ファーストパシフィック及び関連会社のインドフードCBPに投資しています。サリム・グループの複雑な企業構造や所有構造のため、金融機関は融資した資金が実際にどのように使われているか知るのが難しくなっています。

投資引き上げを実施した最初の投資家の一つは、世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金グローバルです。同基金はインドアグリファーストパシフィックが「持続可能でない方法でパーム油を生産している」ことを理由に、これらの企業への投資を引き上げました。銀行では、ドイツ銀行がインドフードとその子会社に対して、労働者の酷使状況が暴露された後に融資を中止したことが最初だと考えられます。今年4月にシティグループはインドアグリへの融資を中止しましたが、一方でインドフードのパーム油関連でない別の事業への融資を継続しています。注目すべき点として、ドイツ銀行シティの両行は強制労働と児童労働を明確に禁止しています。

他の金融機関も、インドフードの顕著なESGリスクを考えれば、特に自らが明確に掲げる基準をインドフードが満たしていない場合には、相応の対応をすべきです。最近ではSMFGが人権方針を発表し、みずほは人権に関するデューデリジェンス方針を強化しました。また、5月15 日に三菱UFJが発表した新融資・引受方針では、「児童労働・強制労働を行っている事業」に対して「環境・社会に対するリスクまたは負の影響を認識した場合はファイナンスを実行しません」と明記しています。

これらの動きは称賛に値しますが、3メガバンクのインドフードに対する対応は、その方針を実施するための試金石となるでしょう。また、ブラックロックはすべての投資先企業に対して「社会へのポジティブな貢献」と「すべてのステークホルダーの利益」を求めています。そのためにはインドフードに対する連携した働きかけと、場合によっては投資引き上げが必要となります。

 

必要とされる対策

インドフードとその他のサリム・グループ企業に金融サービスを提供する機関は、同社及び同グループのパーム油事業に起因する環境および人権への有害な影響に対して、責任の一端を負っています。これは多国籍企業に関するOECDガイドラインおよびビジネスと人権に関する国連指導原則に沿った判断です。銀行や投資家はアンソニー・サリム氏に対して、サリム・グループと同氏の”隠れた関連企業”に適用される「森林破壊なし、泥炭地なし、搾取なし」方針の採用を要求し、信頼できる苦情申立メカニズムの確立、確認された労働法違反や継続中の土地紛争を解決するための独立した検証を伴う是正処置、を強く求める最後通告を即座に発行する必要があります。継続的なリスクに対処するためには、金融機関はすべての新規プランテーション開発の即時中止、高炭素貯留(HCS)アプローチの要求事項の遵守、劣化した泥炭地の回復への投資を確約する期限付きの実施計画の公表を要求する必要があります。

残されている熱帯林と泥炭地を保護および回復し、パーム油事業に関連する人権を尊重することは、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の目標実現のために決定的に重要です。金融セクターは問題解決の一翼を担うことを、十分かつ公的に約束するべき時です。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

ブログ:APP 社は約束を果たすべき時だ(2017/5/24)

森林 シニアキャンペーナー ブリアナラ・モーガン

APP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)社は、インドネシアと中国の両国における最大手の紙パルプメー カーだ。同社は森林破壊や人権侵害をあからさまに行ってきた歴史があるが、2013 年の「森林破壊ゼロ、人権侵害ゼロ、泥炭地開発ゼロ」方針の採択、および天然熱帯林の伐採からの撤退は、インドネシアの森林破壊の防 止に向けた大きな前進だった。しかし現場レベルでは、特に最前線の地域や先住民族のコミュニティにとって十 分な変化は見られていない。

インドネシア、北スマトラ州ルブック・マンダルサ村で、慣習的に所有してきた土地を歩く農民たち。 同村では APP 社との社会的紛争が今も続いている。

APP 社は、森林を破壊し、地域コミュニティの同意なしに土地を利用するという点で、紙パルプ産業における 「最悪中の最悪企業」として長年知られてきた。同社はこれまで、インドネシア国内で管理する土地 260 万ヘク タールのうち 200 万ヘクタール以上(7,700 平方マイル以上)を皆伐している。森林の大部分は、大量の炭素を 貯蔵している泥炭地域にあり、また絶滅の危機に瀕するトラやゾウの生息地であったが、パルプ原料のため、あ るいはパルプ用産業植林地への転換のために皆伐された。皆伐された土地の 100 万ヘクタール以上は、現在ユー カリやアカシアといった単一樹種の植林地と化している。

このような環境破壊と温室効果ガス排出に加えて、 APP 社の負の遺産には社会紛争と地域コミュニティへの被害も含まれる。問題の多くは、APP 社が地域コミュ ニティが所有する土地を特定して伐採や植林開発から除外することを怠ったために生じており、その結果、同社 は数百もの地域コミュニティに対して威圧的な行為を行ったり(時には暴力的な) 紛争を起こしたりしている。

APP 社の木材運搬用重トラックは、紙パルプ用植林地で収穫した木材を運ぶために、定期的に地域コミュニティ の所有地を縦断している。道路を破壊し、もうもうたる砂塵で道路わきの家を覆っている。

主にレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、WWF、FoE、グリーンピースなどの NGO が インドネシアの市民社会ともに、この悪質な企業の問題を明らかにし、同社との取引中止を求める大キャンペー ンを行ったことにより、APP 社による深刻な環境・社会影響は国際社会の注目を浴びることとなった。同社が重要な森林生息地として知られる地域を皆伐したことが発覚後、森林管理協議会(FSC)は 2007 年、同社との関 係を解消した。世界市場もこれを考慮し、ディズニー、マテル、ハーパー・コリンズ、オフィスデポなど数多く の大企業が同社との契約を解除することとなった。解除された契約額は、合計 8 億ドル以上と推定される。

「私たちの土地が解放されるまで、私たちの権利を回復するまで、続けなければなりません。」 イブ・ヌルホトマサリさん(インドネシア、ジャンビ州ルブク・マンダルサ村)

APP 社は、大規模な契約解除への対応のなかで、自らが変わる必要性を認め、2013 年 2 月には自社の業務から森林破壊、人権侵害、および泥炭地での皆伐を止めるという誓約を採択した。これ以降、いくつかの面で進歩はあり、ほとんどの森林減少や、泥炭林への植林地拡大は停止されている。しかし、大きな懸念がある。APP 社 は最近、世界最大規模のパルプ・製紙工場となる OKI 工場を南スマトラ州に完成させたが、この工場のための長期的な原料や木質繊維の供給が足りないのだ。これは APP 社が泥炭地を排水して利用することに引き続き依 存し、パルプ材の生産基盤を拡大する必要があるという、深刻なリスクを意味する。また、それによって新たな 社会紛争やさらなる森林破壊という重大なリスクも発生してくる。

「APP 社が誓約を破っていることは明らかです。」 フランドディ・タルナ・ネガラさん(インドネシア、ジャンビ州ルブク・マンダルサ村)

さらに、APP 社による土地収奪、権利侵害、社会的被害という負の遺産は、依然として大きな問題として残っ ている。現在、数百もの地域コミュニティが、慣習的に所有する森林や農場を、同社が同意なしに使用したり皆伐したことに対して是正を求めているのだ。APP 社の植林地で係争中の社会紛争のなかでも、最も極端な例のひとつは“Beyond Paper Promises”ウェブサイト(英語:訳「紙の約束を越えて」)で紹介しているルブク・マンダルサ村のケースである。事 例として、以下に述べる。

スマトラのジャンビ州のルブック・マンダルサ村は、約 6,000 人のマラユ民族が形成する農業コミュニティで、 自給と現金収入を米や野菜、コーヒーの栽培に依存している。APP 社は 2006 年から同地域で業務を開始し、農 地をブルドーザーで潰し、伐採した木を細い川に投げ入れた。コミュニティは抗議のために立ち上がり、地方政 府に対して苦情申し立てと抗議活動を行った。抗議しても何も変わらず皆伐が続いたため、人々は直接行動を起 こし、掘削機械を破壊した。9人の村人が逮捕され、15ヶ月間刑務所に収容されたが、人々は諦めなかった。APP 社が1期目のユーカリを収穫した後、農民たちは空閑地となったその地に戻り、作物を植えて自分たちの土地を 取り戻した。

インドネシアのルブク・マンダルサ村では、農業はたんなる生計手段ではなく、抵抗手段でもある。

この紛争は 2015 年 2 月 8 日、悲劇的な頂点を迎えた。懸案の土地に出入りして農業を行っていたルブック・ マンダルサ村コミュニティの人々は収穫祭を予定しており、APP 社も収穫祭について事前に通知され、一帯への 出入りを監視していた検問所を人々が自由に通過することに合意した。その日の午後、地元出身の青年活動家インドラ・ペラーニさんは祭りに出席するために検問所を通過しようとしたが、検問所で警備員と言い争いになっ た。インドラ・ペラーニさんが祭りに到着することはなかった。翌日、手足が結ばれ、撲殺された彼の遺体が見 つかった。

殺害された農民活動家、インドラ・ペラーニさん(写真提供:ワルヒ・ジャンビ)

この殺人事件は国内外の報道で広く非難された。殺人事件以降、APP 社は現地の警備会社による業務を停止さ せ、地域コミュニティから概ね手を引いた。警備員は警察に自首し、現在は刑務所で服役している。しかし事件以降もこの地域の根本的な紛争はほとんど変化していない。現在 300 人以上の人々が耕作している土地は、地域 コミュニティが数世代にわたって使ってきたものであるが、法律上、今では APP 社の植林地の一部とされてい るのだ。農民は土地、農作物、建てた家屋を失う恐怖の中で暮らしている。

APP 社は、このような紛争が再び発生しないこと、既存の紛争が解決されること、コミュニティが受けた被害 に対処し、改善されることを確保しなければならない。

英語のブログはこちら(2017/5/24)

関連資料
プレスリリース:紙パルプ調達方針実施に積極的な企業ランキング発表『紙の約束を超えて』」(2018/6/14)